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青森地方裁判所八戸支部 昭和56年(ワ)167号 判決 1983年2月02日

主文

1  被告は、原告らに対し各金四六四万五〇一九円およびこれに対する昭和五五年一二月三日から支払ずみまで各年五分の割合による金員を支払え。

2  原告らのその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  この判決は、原告ら勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実

第一申立

一  原告

1  被告は、原告らに対し各金四八九万五〇一九円およびこれに対する昭和五五年一二月三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  被告

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二主張

一  請求原因

(一)  当事者

原告らは訴外亡清水督悦(以下督悦という)の父母であり、その相続人(相続分各二分の一)である。

(二)  事故の発生

1 日時 昭和五五年一一月三〇日午前九時ころ

2 場所 八戸市白銀四丁目一八番三号市道交差点(信号なし)

3 加害車 普通貨物自動車(青四四ひ六一五三)

4 運転者 被告

5 被害者 清水督悦(昭和五一年七月六日生)

6 態様 被告が加害車を運転し、右交差点を右折した際、その右方交差点角で子供用自転車に乗つて停止中の被害者に自車を衝突させて轢過し、そのため被害者を同年一二月三日脳幹麻痺により死亡させた。

(三)  責任原因

被告は、加害車を所有しかつ自己のため運行の用に供していた。

(四)  損害

1 葬儀費用 各金五〇万円

2 逸失利益 各金八三三万五〇一九円

その算定は別紙1ないし5のとおり。

3 慰藉料 各金四五〇万円

原告らは最愛の長男を一瞬にして失い、その悲しみははかり知れない。

4 弁護士費用 各金四四万五〇〇〇円

原告らは、原告訴訟代理人ら三名に、本訴提起追行を委任し、委任時に原告らは各金五万円、第一審判決時に各金三九万五〇〇〇円を支払うことを約した。

(五)  損害の填補 各金八八八万五〇〇〇円

自賠責保険から金一七七七万円の支払を受けその各二分の一を充当。

(六)  よつて、原告らは被告に対し本件交通事故による損害賠償として各自金四八九万五〇一九円およびこれに対する督悦死亡の日である昭和五五年一二月三日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因(一)の事実は認める。

2  同(二)の事実中「被害者が交差点角で停止中」であることは否認するが、その余の事実は認める。

3  同(三)の事実は認める。

4  同(四)の事実は否認する。逸失利益の算出は、収入額については稼働開始時期である一八歳ないし一九歳の平均給与とすべきであり、中間利息控除は新ホフマン係数を採用するのが妥当公平である。昭和五五年度賃銀センサス第一巻第一表産業計企業規模計の男子労働者年齢別(一八歳ないし一九歳)によると、ほぼ金一三二六万五〇〇〇円となる。慰藉料については金八〇〇万円、葬儀費用は金四〇万円が相当である。弁護士費用については、被告は、督悦死亡一四日後から数回にわたり補償の話合をしたが、原告らの請求額が金三六九八万一四〇〇円と不当に高かつたため和解にいたらなかつたものであり、本件訴訟提起は原告らの不当請求によるものであるから被告に賠償義務はない。

5  同(五)の事実は認める。

6  同(六)は争う。

三  抗弁

被告は、本件事故発生交差点を徐行状態で右折したところ、右後方より小児用自転車で進行してきた督悦と接触したものである。幼児は往々にして車両の進行や動静に十分注意を払わず横断しがちであるので、事故発生防止のため、原告らは督悦に付添い、幼児の軽率な行動を抑制すべき監督義務があるのにこれを怠つて、交通頻繁な道路上に一人放置していた。その過失割合は二〇パーセントが相当である。

四  抗弁に対する認否

抗弁事実は否認する。原告らに過失があるとの主張は争う。

第三証拠〔略〕

理由

一  請求原因(一)(当事者)の事実については、当事者間に争いがない。

二  同(二)(事故の発生)の事実については、被害者が交差点角で停止中であつたとの点を除くその余の事実については当事者間に争いがない。被害者督悦が右地点で停止中であつたことについてはこれを認めるに足りる適確な証拠はない。

三  同(三)の事実(責任原因)については、当事者間に争いがない。

四  損害について検討する。

1  葬儀費用 金五〇万円

原告勝一本人尋問の結果により成立の真正を認めうる甲第四号証の一ないし三、第五号証の一、二、第六号証、第七号証の一、二、第八号証、第九ないし第一一号証の各一、二、第一二、第一三号証および原告勝一本人尋問の結果によると、原告らは葬儀費用として金五〇万円を下らない費用を要したことが認められ、原告らが被告に対し請求しうる額は金五〇万円をもつて相当と認める。

2  逸失利益 各金八三三万五〇一九円

成立に争いのない甲第一号証、原告清一本人尋問の結果、当事者間に争いのない事実および弁論の全趣旨を総合すると、督悦は昭和五一年七月六日生れの健康な男子で、本件事故がなければ、少くとも満一八歳から満六七歳まで、昭和五六年賃金センサス第一巻第一表産業計、企業規模計、学歴計、年齢男子労働者平均賃金の年間合計金三六三万三四〇〇円の収入額を得ることができたものと推認されるので、ライプニツツ方式により中間利息を控除し、更に生活費(五〇パーセント)を控除すると、右稼働可能期間中の逸失利益の本件事故当時における現価を求めるとその金額は金三三三四万〇〇七八円となる(その算式は別紙1ないし5)。

3  慰藉料 各金四五〇万円

前記当事者間に争いない督悦の受傷による死亡、事故の態様などを考慮すると、本件事故によつて原告らが受けた精神的苦痛を慰藉するために相当な額は各金四五〇万円を下らないと認める。

4  弁護士費用 各金四四万五〇〇〇円

弁論の全趣旨によると原告らが訴訟委任したことが認められ、本件事案の性質、審理の経過、認容額にかんがみると原告らが本件事故による損害としての賠償を求めうる弁護士費用の額は各金三九万五〇〇〇円を下らないものと認める。

五  請求原因(五)(損害の填補)の事実については当事者間に争いがない。

六  そこで抗弁について検討する。被告は督悦が右折の加害車の後方より進行して加害車に接触した旨主張するけれども本件全証拠によるもこれを認めることはできない。いずれも成立に争いのない甲第一九ないし第二一号証によれば、被告は事故前督悦が小児用自転車に乗つていることのみを約一一・九メートル手前で気づきながら、その後は全く督悦の動静に注意を払うことなく進行し右折し本件事故を惹起するに至つたことが認められ、この認定に反する証拠はない。この事実によると被告には重大な過失があつたものと言うべく、その余の点について考えるまでもなく、原告らの損害を算定するに当つて原告らの過失として斟酌すべきものはない。

七  以上によると、原告らの請求は各金四六四万五〇一九円およびこれに対する昭和五五年一二月三日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で正当であるから認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 齋藤清六)

別紙

1 年収 3,633,400円

昭和56年賃金センサス第1巻第1表

産業計、企業規模計の男子労働者の学歴計、年齢計の給与額による。

(235,300×12)+809,800

2 就労可能年数 49年間(18歳から67歳)

3 中間利息控除 ライプニツツ係数9.176

4 生活費控除 2分の1

5 計算 (上記1×3×4)

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